ブログ
歯石を放置するとどうなる?歯科医が警告する歯周病や口臭のリスク
2026.03.17

こんにちは。みどりの森デンタルクリニック町田、院長の須藤真行です。
「最近、歯磨きの時に歯茎から血が出るようになった」
「家族から口臭を指摘されて、人と話すのが億劫になってしまった」
「舌で歯の裏側を触ると、ザラザラ・トゲトゲしている気がする」
日々の診療において、このようなお悩みを抱えて来院される患者様のお口の中を拝見すると、歯と歯茎の境目や、歯と歯の間に「歯石(しせき)」がびっしりと付着していることが非常に多く見受けられます。
「毎日3回、食後にしっかり磨いているのに、なぜ歯石ができるの?」と驚かれる方も少なくありません。しかし、どんなに一生懸命に歯磨きをしていても、お口の中の形状は複雑であり、ご自身のセルフケアだけで磨き残しを完全にゼロにすることは不可能なのです。
歯石そのものは、名前の通りただの「石」のように思えるかもしれません。痛みがないため、「今すぐ取らなくても大丈夫だろう」と放置されがちです。しかし、この歯石をそのままにしておくと、お口の中の環境を劇的に悪化させ、最終的には大切な歯を失ってしまう恐ろしい事態を引き起こします。
今回は、歯石がもたらす口臭や歯周病の本当のリスクと、ご自身で取ろうとする危険性、そして私たちが目指す「根本からの予防」について、専門家の視点から分かりやすくお話しいたします。
目次
- 歯垢(プラーク)と歯石の違いとは?
- 歯垢は「生きている細菌の塊」
- 歯垢が唾液の成分と結びついて「歯石」に変わる
- 歯石を放置することで生じる3つの深刻なリスク
- リスク①:強烈な「口臭」の発生源になる
- リスク②:「歯周病」を悪化させ、最終的に歯を失う
- リスク③:糖尿病や心疾患など「全身の健康」への悪影響
- 「自分で歯石を取る」のは絶対にNG!その理由とは
- 歯や歯茎を傷つける大きな危険性
- 表面が粗くなり、さらに汚れが付きやすくなる悪循環
- 歯科医院で行う安全で「痛みに配慮した」歯石除去
- プロフェッショナルによる専用器具を使ったスケーリング
- ツルツルにして再付着を防ぐ「PMTC」の重要性
- 痛みが苦手な方へ寄り添う当院の取り組み
- 歯石をつきにくくする「根本治療」と予防の考え方
- 見落としがち!「噛み合わせ」や歯並びが及ぼす影響
- 一人ひとりに合わせたオーダーメイドの予防プログラム
- まとめ:定期的なクリーニングが一生の健康を創る
1. 歯垢(プラーク)と歯石の違いとは?
まずは、そもそもの原因である「歯垢(プラーク)」と「歯石」の違いについてお話ししましょう。この2つは混同されやすいのですが、性質が全く異なります。
歯垢は「生きている細菌の塊」
食後、歯の表面に付着する白くてネバネバした物質、これが歯垢(プラーク)です。食べかすそのものだと思われがちですが、実は1ミリグラムの歯垢の中に数億個もの細菌が棲みついている「生きている細菌の塊」なのです。
この段階であれば、まだ柔らかいため、毎日の正しいブラッシングやデンタルフロスによってご自身で落とすことが可能です。
歯垢が唾液の成分と結びついて「歯石」に変わる
しかし、磨き残しによって歯垢が歯の表面に留まり続けると、どうなるでしょうか。唾液の中に含まれるカルシウムやリンといったミネラル成分と歯垢が結びつき、徐々に石灰化(せっかいか)を始めます。
個人差はありますが、わずか2〜3日で歯垢はカチカチの「歯石」へと変化してしまいます。一度歯石になってしまうと、非常に硬く歯にこびりつくため、どんなに硬い歯ブラシで強く擦っても、決してご自身で落とすことはできなくなります。
2. 歯石を放置することで生じる3つの深刻なリスク
「痛くないから」「見えない部分だから」といって歯石を放置すると、どのようなことが起きるのでしょうか。私たちが最も危惧している3つのリスクについてお伝えします。
リスク①:強烈な「口臭」の発生源になる
歯石の表面は、軽石のように無数の小さな穴が空いており、ザラザラしています。この無数の穴は、生きた細菌(歯垢)にとって絶好の「隠れ家」であり「繁殖場所」となります。
歯石の表面にさらに新しい歯垢が溜まり、そこで増殖した歯周病菌が、食べかすのタンパク質を分解する際に「メチルメルカプタン」や「硫化水素」といった揮発性硫黄化合物を発生させます。これが、玉ねぎが腐ったような強烈な口臭の正体です。
どんなに高価なマウスウォッシュを使ったり、ガムを噛んだりしても、発生源である歯石を取り除かない限り、口臭を根本から絶つことはできません。
リスク②:「歯周病」を悪化させ、最終的に歯を失う
歯石そのものが直接歯を溶かすわけではありませんが、歯石に付着した細菌が出す毒素が、歯茎に炎症(歯肉炎)を引き起こします。これが「歯周病」の始まりです。
炎症が起こると、歯と歯茎の間に「歯周ポケット」と呼ばれる深い溝ができ、その溝の奥深くへと歯石がさらに広がっていきます(縁下歯石:えんかしせき)。溝の奥深くは酸素が届かないため、空気を嫌う凶悪な歯周病菌が爆発的に増殖します。
その結果、歯を支えている周りの骨(歯槽骨)が溶かされ、気づいた時には歯がグラグラになり、最終的には抜け落ちてしまうのです。日本の成人が歯を失う原因の第1位は虫歯ではなく、この歯周病です。
リスク③:糖尿病や心疾患など「全身の健康」への悪影響
近年、歯科医学の研究により、歯周病は単なる口の中の病気にとどまらないことが明らかになっています。
歯茎の毛細血管から入り込んだ歯周病菌やその毒素が全身を巡ることで、糖尿病の悪化、動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞のリスク上昇、さらには誤嚥性(ごえんせい)肺炎や早産・低体重児出産にも深く関与していることが分かっています。
つまり、歯石を放置することは、お口の健康だけでなく、ひいては全身の健康や寿命そのものを脅かすリスクを抱え込むことになるのです。
3. 「自分で歯石を取る」のは絶対にNG!その理由とは
インターネットなどで「自分で歯石を取るためのスケーラー(専用の金属器具)」が販売されているのを目にすることがあります。「歯医者に行く時間がないから自分で取ろう」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、これは非常に危険な行為ですので、絶対におやめください。
歯や歯茎を傷つける大きな危険性
私たち歯科医師や歯科衛生士は、歯の解剖学的な知識を持ち、器具の正しい角度や当てる力を専門的に訓練しています。
知識や技術のない方が鏡を見ながら鋭利な器具を使用すると、歯石だけでなく健康な歯の表面(エナメル質)まで削り取ってしまったり、歯茎を深く傷つけて激しい出血や感染症を引き起こしたりする危険があります。
表面が粗くなり、さらに汚れが付きやすくなる悪循環
仮に目に見える部分の歯石を削り落とせたとしても、器具で傷つけられた歯の表面は細かい傷だらけになり、非常に粗い状態になります。
このザラザラした傷跡は、先ほどの軽石の穴と同じように、細菌にとって最高の足場となります。結果として、以前よりもさらに早く、より強固な歯石がこびりつく「悪循環」に陥ってしまうのです。
4. 歯科医院で行う安全で「痛みに配慮した」歯石除去
安全に、かつ確実に歯石を取り除くためには、やはり歯科医院でのプロフェッショナルケアが不可欠です。当院では、次のようなステップで丁寧なケアを行っています。
プロフェッショナルによる専用器具を使ったスケーリング
歯科衛生士が「スケーラー」や、微細な超音波の振動で歯石を粉砕する「超音波スケーラー」などの専用機器を使用し、歯の表面や歯周ポケットの奥深くに潜む歯石まで、徹底的に除去します(スケーリング)。
プロの技術により、歯への負担を最小限に抑えながら、確実な清掃を行います。
ツルツルにして再付着を防ぐ「PMTC」の重要性
歯石を取った後は、「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)」と呼ばれる仕上げの研磨を行います。
専用のペーストと柔らかいラバー製の器具を用いて、歯の表面をツルツルに磨き上げます。これにより、目に見えない微細な傷をなめらかにし、新たな歯垢や歯石、着色汚れ(ステイン)の再付着を強力に防ぎます。PMTCの後は、お口の中がすっきりと爽快になり、歯本来の自然な白さも取り戻すことができます。
痛みが苦手な方へ寄り添う当院の取り組み
「以前、歯石取りで痛い思いをしたから行きたくない」というお声を頂戴することがあります。
確かに、歯茎に強い炎症がある場合や、歯周ポケットの深い部分を触る際には痛みを伴うことがあります。しかし、当院では患者様の痛みを可能な限り抑えるため、必要に応じて表面麻酔(塗る麻酔)を併用するなど、お一人おひとりの状態に合わせた細やかな配慮を行っています。
「痛いのは苦手です」と、どうぞ遠慮なくお伝えください。患者様のお気持ちに寄り添い、決して無理のないペースで処置を進めてまいります。
5. 歯石をつきにくくする「根本治療」と予防の考え方
歯石を綺麗に取り除いたら、それで終わりではありません。「なぜ、そこに歯石がつきやすかったのか」を考え、再び同じ状況を繰り返さないためのアプローチが必要です。当院が掲げる「最小限の治療と最大限の予防」の観点から、見落とされがちなポイントをお伝えします。
見落としがち!「噛み合わせ」や歯並びが及ぼす影響
歯並びがデコボコしている部分(叢生:そうせい)は、どうしても歯ブラシが届きにくく、歯垢が溜まって歯石になりやすい傾向があります。
しかし、それだけではありません。実は「噛み合わせのバランス」が悪いと、特定の歯に過剰な力がかかり、その衝撃で歯の根元付近の歯茎が退縮して隙間ができたり、歯が微細に揺さぶられることで歯周ポケットが深くなったりします。こうした物理的なダメージを受けた環境は、細菌が入り込みやすく、歯石が非常に沈着しやすい状態(環境悪化)を引き起こすのです。
「何度歯石を取っても、いつも同じ場所の歯茎が腫れる」という場合、その根本原因は磨き残しではなく、噛み合わせの不調和にあることが少なくありません。当院では、お口全体を一つの器官として捉え、必要であれば噛み合わせのバランスを整えることで、汚れが溜まりにくい健康な土台づくりを行っています。
一人ひとりに合わせたオーダーメイドの予防プログラム
お口の環境は十人十色です。唾液の質、食生活のリズム、噛み合わせの癖など、リスクとなる要因は患者様ごとに異なります。
当院では、画一的な歯磨き指導で終わらせるのではなく、患者様のライフスタイルやリスクに基づいた「オーダーメイドの予防プログラム」をご提案しています。
どのタイミングで、どのようなケアアイテム(フロスや歯間ブラシなど)を使うのが最も効果的か。そして、何ヶ月に一度のペースでプロフェッショナルケア(定期検診)を受けるべきか。
私たちと一緒に、無理なく続けられる予防の仕組みを作っていきましょう。
6. まとめ:定期的なクリーニングで一生の健康を守る
歯石は、目立った痛みがないまま静かに、そして確実にあなたのお口の健康を蝕んでいく「時限爆弾」のようなものです。
口臭が気になり始めたり、歯茎から血が出たりした時は、すでに危険信号が灯っている状態です。
「痛くなってから行く歯医者」から、「痛くなる前に、健康を維持するために通う歯医者」へと意識を変えてみませんか?
3〜4ヶ月に一度、美容院や理髪店で髪を整えるような感覚で、お口のクリーニングにお越しください。それが、一生ご自身の歯で美味しく食事を楽しみ、全身の健康を守るための最も確実な投資となります。
町田で歯石除去や歯周病治療についてのご相談なら、みどりの森デンタルクリニック町田へお任せください。
経験豊富な歯科衛生士と歯科医師が連携し、あなたのお口の健康を根本からお守りいたします。皆様のご来院を心よりお待ちしております。
少しでも参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
監修者情報
【経歴】
- 平成9年3月 松本歯科大学 卒業
- 平成9年4月 医療法人社団厚誠会 勤務
- 平成13年5月 みどりの森デンタルクリニック 開業
- 平成16年1月 医療法人財団真和会 設立
- 平成23年9月 みどりの森デンタルクリニック町田 開業
【資格・学会】
- ・日本臨床歯周病学会 会員
- ・日本口腔衛生学会 会員
- ・日本インプラント歯科学会 会員
- ・歯学博士(神奈川歯科大学大学院 博士課程修了)