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被せ物・詰め物で噛みにくい?東京の歯科が解説する“再調整”の見極め方
2025.11.14

こんにちは。みどりの森デンタルクリニック町田の院長です。
「新しく被せ物を入れてから、前より噛みにくくなった気がする」
「詰め物をしてもらってから、片側だけ当たりが強い」
「“そのうち慣れますよ”と言われたけれど、本当に様子を見て大丈夫…?」
このようなご相談は、東京・町田エリアでもよく伺います。
被せ物や詰め物は、むし歯や欠けた歯を守る大切な治療ですが、入れた直後はどうしても“違和感”が出やすいものです。一方で、違和感の中には「慣れ」で済ませてはいけないものもあり、その見極めは患者さんご自身では難しいこともあります。
この記事では、歯科医の立場から、
被せ物・詰め物で噛みにくくなる典型パターン
どこまでが「様子を見てよい違和感」か
どのような場合に“再調整”を検討した方がよいのか
実際の調整の流れや、作り直しが必要になるケース
などを、できるだけ分かりやすくお話しします。
あくまで一般的なお話であり、実際の診断や治療方針は、お口の状態を拝見したうえで個別に判断されるものです。その点をご理解いただいたうえで、お読みいただければと思います。
目次
- 「噛みにくい」は決して珍しい相談ではありません
- 新しい被せ物・詰め物で違和感が出る理由
- 慣れていく違和感・慣れで済ませてはいけない違和感
- ご自宅で意識してみてほしいセルフチェック
- 再調整をためらわず相談してほしいサイン
- 歯科医院で行う“再調整”の実際の流れ
- よくある不安と、歯科医としてお伝えしたいこと
- まとめ:遠慮せず、「正直な違和感」を教えてください
1. 「噛みにくい」は決して珍しい相談ではありません
被せ物や詰め物の治療のあとに、「前と噛み心地が違う」「どこかだけ強く当たる気がする」と感じる方は、決して少なくありません。
歯は、上下で細かくかみ合う複雑な構造をしており、ほんのわずかな高さの違いでも、舌や頬は敏感に察知します。
歯科医側も、装着の際に噛み合わせを細かく確認しますが、それでも診療台の上と、実際の食事のときとでは、顎の使い方が違うことがあります。診療室では問題なくても、実際にご自宅でご飯やパン、肉などを噛んでみると、初めて気づく違和感もあります。
大切なのは、「違和感があること」そのものを悪く捉えすぎず、気になる点を率直に伝えていただくことです。歯科医の側も、患者さんからの感覚のフィードバックをもとに、微調整を重ねていきます。
2. 新しい被せ物・詰め物で違和感が出る理由
では、なぜ新しい被せ物や詰め物で噛みにくさが出るのでしょうか。理由はいくつかあります。
ひとつは、高さや形の問題です。被せ物や詰め物は、元の歯の形や上下の噛み合わせを参考に作製しますが、実際のお口の中で「どの歯と、どのタイミングで当たるか」は、顎の動き方や筋肉の癖によって変わります。
例えば、ほんの数十ミクロン(髪の毛1本分程度)の高さの違いでも、人によっては「そこだけカチッと当たる」「他の歯よりも先に当たる」と敏感に感じ取ることがあります。
もうひとつは、神経の状態や周囲組織の反応です。深いむし歯を治療したあとの歯は、一時的に神経が刺激に敏感になっていることがあります。そのため、以前と同じ程度の噛み合わせでも、「治療した歯だけ違和感が強く出る」というケースもあります。
さらに、長年の噛み癖や、片側で噛む習慣がある場合には、新しい被せ物が“今までとは違う正しい位置”に近づけられているがゆえに、一時的に違和感として感じられることもあります。
つまり、「違和感がある=必ずしも失敗」という単純な話ではなく、調整すべき違和感と、慣れていく過程の違和感が混出しているというのが、実際の臨床に近い感覚です。
3. 慣れていく違和感・慣れで済ませてはいけない違和感
ここが患者さんにとって一番悩ましいところかもしれません。「少し噛みにくい気がするけれど、様子を見ていいのか、それともすぐに相談した方がいいのか」。
私自身は、初期の違和感について、次のようにお話しすることが多いです。
まず、「噛んだときに軽い違和感はあるが、痛みはほとんどない」「数日で少しずつ気にならなくなってきている」といった場合は、歯や顎が新しい形に慣れていく過程で感じられることがあります。このようなケースでは、数日〜1〜2週間ほど経過をみたうえで、それでもまだ強い違和感が続くようであれば再調整を検討します。
一方で、「噛んだ瞬間にズキッと鋭い痛みが走る」「特定の一点だけ強く当たっている感じがはっきりある」「反対側でしか噛めないため、食事がつらい」といった場合は、あまり“慣れ”に期待しすぎるべきではありません。噛むたびに過剰な力がかかることで、歯の根や顎関節に負担が蓄積してしまうことがあるからです。
また、痛みや違和感があるにもかかわらず、「我慢していればそのうち慣れるだろう」と長期間放置してしまうと、周囲の筋肉や顎の動き自体にクセがついてしまい、その後の調整が難しくなることもあります。
「違和感の質」と「経過」を一緒に考えながら、慣れるのを待つのか、早めに調整するのかを判断することが大切だと感じています。
4. ご自宅で意識してみてほしいセルフチェック
「ただの違和感なのか、それとも相談したほうがいい症状なのか」を見極めるうえで、ご自宅でできる簡単なセルフチェックがあります。
たとえば、食事のときに「自然に両側で噛めているかどうか」を意識してみてください。片側でしか噛めない状態が続いているときは、その反対側に負担が集中している可能性があります。また、食後や就寝前に、顎の付け根やこめかみ周辺を指で軽く押さえてみて、普段よりも強い張りや痛みがないかを確認するのもひとつの方法です。
冷たいものや硬いものを噛んだときだけではなく、柔らかいものを噛んだときにも違和感が出るのかどうか、噛んだ瞬間なのか、噛み続けているうちに痛むのか、といった違いも、診断のヒントになります。
こうした感覚をメモしておいていただけると、歯科医院での診察の際に、私たちもイメージしやすくなります。
5. 再調整をためらわず相談してほしいサイン
次のような場合には、「忙しいから…」と先延ばしにせず、早めに担当の歯科医院に相談していただくことをおすすめします。
噛んだときに、電気が走るような痛みがある
特定の歯にだけ、明らかに強い当たりを感じる
被せ物を入れてから、顎やこめかみのだるさ・頭痛がはっきり増えた
反対側でしか噛めず、食事のたびにストレスを感じる
その歯だけ、日を追うごとにしみ方や痛みが強くなっている
もちろん、これらがすべて「被せ物・詰め物のせい」とは限りませんが、いずれにせよ歯や顎からのサインであることには変わりありません。
「せっかく作ってもらったのに申し訳ない」「また調整をお願いして良いのか不安」というお気持ちはよく分かりますが、きちんと噛めることの方が、長い目で見てずっと大切だと私は思っています。
6. 歯科医院で行う“再調整”の実際の流れ
再調整と聞くと、「また大掛かりなことをされるのでは」と心配される方もいらっしゃいますが、多くの場合は、より細やかな“微調整”の積み重ねです。
当院ではまず、「どのようなときに、どんな違和感が出るのか」を具体的にお聞きします。そのうえで、実際にお口の中を拝見し、咬合紙などを使って、どの歯がどのタイミングで当たっているかを確認します。被せ物や詰め物の高さだけでなく、左右や前後のバランスも含めて、全体の噛み合わせを評価していきます。
必要に応じて、歯の表面をごく薄く研磨するように調整したり、被せ物そのものの形をわずかに修正することもあります。削る量はできる限り最小限にとどめますが、それでも「どこを、なぜ、どのくらい調整するのか」をできるだけ分かりやすく説明し、納得していただいたうえで進めるようにしています。
調整後は、その場での噛み心地だけでなく、「数日お使いいただいたときの感覚」も重要な情報です。そのため、完全に一度で終わるというよりも、必要に応じて数回に分けて微調整を行うこともあるとお考えいただくとよいかもしれません。
状態によっては、「被せ物の作り直し」や、根の治療(根管治療)が必要になるケースもあります。その場合も、いきなり処置に入るのではなく、選択肢やメリット・デメリットを含めて、ご本人とよく相談してから方針を決めていきます。
7. よくある不安と、歯科医としてお伝えしたいこと
被せ物や詰め物の再調整に関して、患者さんからよく伺う不安がいくつかあります。
ひとつは、「何度も調整をお願いすると、先生に嫌がられないか」という心配です。正直に言えば、私たち歯科医にとっても、「噛み心地がどう変わったか」を患者さんに細かく教えていただけるのは、とてもありがたいことです。調整の精度を高めるうえで、患者さんの感覚は欠かせない情報源だからです。遠慮せず、正直な感覚を教えていただければと思います。
もうひとつは、「削られすぎて歯が弱くならないか」という不安です。これは歯科医の側も常に意識しているポイントであり、不要な削合を避けるために、あらかじめ噛み合わせの全体像を把握してから調整するよう心がけています。どういう意図で削るのかをお伝えすることで、不安が少しでも和らげばと思っています。
また、自費診療の被せ物を入れた場合、「高いお金を払ったのに、再調整をお願いしていいのか」と迷われる方もいらっしゃいます。むしろ、自費・保険に関わらず、「しっかり噛めて長く使える状態にすること」が治療の目的ですので、気になる点は早めに共有していただくことをお勧めします。
8. まとめ:遠慮せず、「正直な違和感」を教えてください
被せ物や詰め物の治療は、むし歯や欠けた歯を守るために欠かせないものです。しかし、その“仕上がり”を本当に完成に近づけていくのは、装着したその日ではなく、その後の微調整と、患者さんからのフィードバックだと日々感じています。
噛みにくさや違和感は、「大げさかな」と感じてしまうかもしれませんが、毎日の食事や会話に関わる大切な感覚です。東京・町田エリアで、「被せ物をしてからなんとなく調子が悪い」「どこまで我慢していいのか分からない」と感じている方は、どうぞ一度、ご自身の言葉でその違和感を教えてください。
みどりの森デンタルクリニック町田では、過度な宣伝や誇大な表現を避けながら、患者さんと一緒に“ちょうどよい噛み心地”を探していくことを大切にしています。必要以上に削らないことと、必要な調整はしっかり行うこと。そのバランスを丁寧に見極めながら、長く安定して噛める状態を目指していきたいと思っています。
少しでも参考になれば幸いです。
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本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
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