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歯ぎしり対策の最前線|東京で受けるナイトガードと行動療法の実際
2025.10.31

こんにちは。みどりの森デンタルクリニック町田の院長です。
「朝起きると奥歯がだるい」「家族から歯ぎしりがうるさいと言われる」「マウスピースを勧められたけれど、本当に必要なのか不安」──診療室では、こうしたご相談を受けることがとても増えています。
歯ぎしりや食いしばりは、医学的には「ブラキシズム」と呼ばれる習慣です。多くの人に見られる現象で、必ずしもすべてが病的というわけではありませんが、強い力が長期間続くと、歯が欠ける・詰め物が壊れる・顎関節が痛むなど、さまざまなトラブルの引き金になることがあります。
その対策としてよく耳にするのが、ナイトガード(マウスピース)と、行動療法(生活習慣やクセの見直し)です。ただ、「どこまで効果があるのか」「一生装着し続けないといけないのか」「市販のマウスピースと何が違うのか」など、疑問や不安も多い分野だと思います。
この記事では、東京・町田エリアで日々診療している立場から、
歯ぎしり・食いしばりがもたらす影響
歯科医院で作るナイトガードの役割と限界
行動療法で何ができるのか
実際の治療の進め方と、注意しておきたいポイント
を、できるだけわかりやすくお話ししていきます。
なお、ここでお伝えする内容はあくまで一般的なお話であり、具体的な診断や治療方針は、実際の診察に基づいて個別に判断されるものです。その点をご理解いただいたうえで、お読みいただければと思います。
目次
- 「歯ぎしり」と「食いしばり」は何が問題なのか
- どうして東京で歯ぎしりに悩む人が増えているのか
- ナイトガードとは何か?役割と限界
- 行動療法でアプローチできるポイント
- ナイトガードと行動療法をどう組み合わせるか
- 実際に歯科を受診したときの流れ
- 当院で歯ぎしり・食いしばりに向き合うときの考え方
- まとめ:守る治療と、変えていく治療を上手に使い分ける
1. 「歯ぎしり」と「食いしばり」は何が問題なのか
歯ぎしりというと、「寝ているときにギリギリ音を立てるイメージがあります」と言われる方が多いですが、実際にはもう少し幅の広い現象です。眠っている間に歯をこすり合わせるタイプもあれば、日中の仕事や家事の最中に奥歯をグッと噛みしめているタイプもあります。いずれも、歯や顎、筋肉にとっては大きな負担になります。
歯や被せ物は、想像以上に強い力にさらされています。食事のときに必要な噛む力は瞬間的なもので、適切に分散されるように設計されていますが、歯ぎしり・食いしばりでは、それ以上の力が長時間かかり続けることがあります。その結果、歯がすり減る、欠ける、ヒビが入る、詰め物や被せ物が割れる、といったトラブルが起こりやすくなります。
また、顎を動かす筋肉にも常に力が入っている状態が続くため、朝起きたときに顎やこめかみがだるかったり、頭痛や肩こりとして症状が現れたりすることもあります。顎関節そのものに負担がかかると、口を開けるときに音がする、開きにくい、痛みが出る、といった顎関節症状につながることもあります。
歯ぎしりや食いしばりは、誰にでも一時的に起こりうるものですが、強さと頻度が高い状態が長く続くときには、何らかの対策を講じた方がよい場合があります。
2. どうして東京で歯ぎしりに悩む人が増えているのか
東京・首都圏で診療していると、歯ぎしりや食いしばりに悩む方は、ここ数年で確実に増えていると感じます。その背景には、いくつかの要因が重なっています。
ひとつは、ストレスや生活リズムの変化です。仕事のプレッシャー、人間関係、将来への不安など、精神的な緊張はそのまま筋肉の緊張につながりやすくなります。眠っているときは意識のコントロールから離れますので、日中に抑えていたストレスが、歯ぎしりや食いしばりという形で表に出てくることがあります。
もうひとつは、先ほど別の記事でも触れたような、在宅ワークの増加による姿勢の変化です。前かがみの姿勢が続くと、頭を支えるために首や肩、顎まわりの筋肉に常に力が入った状態になり、その延長線上で歯を強く当ててしまう方が増えています。
さらに、ナイトガードや歯ぎしりという言葉が一般的になり、「もしかして自分もそうなのでは」と自覚して相談に来られる方が増えた、という側面もあると思います。いずれにしても、歯ぎしりそのものを完全に“ゼロ”にすることは難しくても、その影響をどうやって減らしていくかが重要なテーマになっています。
3. ナイトガードとは何か?役割と限界
ナイトガードは、いわゆる「マウスピース」の一種で、主に夜間の歯ぎしり・食いしばりによる負担から歯や顎を守るための装置です。歯科医院で作るナイトガードは、患者さんご自身の歯型を採って作製しますので、市販品に比べてフィット感が良く、噛み合わせの状態も考慮して調整することができます。
ナイトガードの役割は、大きく分けて二つあります。ひとつは、歯そのものを守る「保護」です。硬い素材のマウスピースを介することで、歯同士が直接ぶつかるのを防ぎ、すり減りやヒビ、破折のリスクを減らします。もうひとつは、筋肉や顎関節の負担を和らげる「負担分散」です。噛み合わせの接触パターンをコントロールすることで、特定の歯や筋肉に負担が集中するのを避ける効果が期待できます。
ただし、ナイトガードはあくまで「防具」であり、歯ぎしりそのものを根本的になくす治療ではないことを知っておいていただきたいと思います。装着している間は守られますが、「なぜ歯ぎしり・食いしばりが起きているのか」という背景まで解決するわけではありません。
また、使い方にもコツがあります。自己判断で市販のマウスピースを削ったり、合わない装置を無理に使い続けたりすると、かえって顎や歯に負担をかけてしまうことがあります。歯科医院で作る場合も、定期的なチェックや調整を受けながら、「自分にとってちょうど良い状態」を一緒に探していくことが大切です。
4. 行動療法でアプローチできるポイント
歯ぎしり・食いしばりに対して、ナイトガードと並んで重要なのが「行動療法」です。少し堅い言葉に聞こえるかもしれませんが、内容としては、ご自身のクセや生活習慣を見直し、負担を減らしていくための具体的な工夫のことです。
まず大切なのは、「自分がどんな場面で歯を噛みしめているのか」を知ることです。パソコン作業中、運転中、スマートフォンを見ているとき、家事をしているとき──ふとしたタイミングで、奥歯に力が入っていないか、気づいた瞬間にチェックしてみてください。
「気づいたら噛んでいた」ことが分かるようになると、次第に「今、力を抜こう」と意識的にリセットすることができるようになります。きっちりとしたトレーニングというよりも、「気づいたら、そっと噛む力を手放す」クセをつけていくイメージです。
また、睡眠前の過ごし方も大切です。寝る直前まで仕事やスマートフォンに向かっていると、脳と身体が緊張状態のまま眠りに入ることになり、歯ぎしりが強くなることがあります。可能であれば、寝る1時間前は照明を少し落とし、ストレッチや入浴など、リラックスできる時間にあてることをおすすめします。
ストレスそのものを一気になくすことは難しいかもしれませんが、「一日の中で、意識的に力を抜く瞬間をつくる」ことが、歯ぎしり・食いしばりの和らぎにつながることがあります。
5. ナイトガードと行動療法をどう組み合わせるか
歯ぎしり対策の理想的な形は、ナイトガードによる「守る治療」と、行動療法による「変えていく取り組み」を、無理のない範囲で両立させることだと考えています。
ナイトガードは、歯や顎に対する物理的な負担をその日から軽減してくれます。一方、行動療法は、生活習慣や緊張のパターンを少しずつ変えていく取り組みですので、効果を実感するまでに時間がかかることもあります。しかし、長期的な視点で見ると、「噛みしめるクセ自体を弱める」ことができれば、装置への依存度を下げていくことも期待できます。
実際の診療では、まずナイトガードで歯と顎を守りつつ、並行して日中の噛みしめチェックや生活リズムの見直しをお願いすることが多いです。しばらく経ってから、「マウスピースをしない昼間でも、以前ほどは辛くなくなった」と感じられる方もいらっしゃいます。
大切なのは、「装置だけに頼る」あるいは「生活習慣だけで何とかしよう」と極端に振れるのではなく、ご自身の状態や生活に合わせた現実的なバランスを一緒に探していくことだと思います。
6. 実際に歯科を受診したときの流れ
歯ぎしりや食いしばりが気になって受診された場合、当院ではまず、いつ頃からどのような症状があるのか、日中と夜間のどちらがつらいのか、仕事や生活の状況などを丁寧に伺います。そのうえで、お口の中を拝見し、歯のすり減り具合、ヒビや欠けの有無、被せ物の状態、噛み合わせの接触パターンなどを確認します。
必要に応じて、レントゲンで歯や顎の骨の状態を確認したり、顎関節周囲を触診して筋肉の緊張度や痛みの部位を調べたりします。こうした情報をもとに、「どこに負担が集中しているのか」「今、最も守るべき場所はどこか」を整理していきます。
ナイトガードが適していると判断した場合には、歯型を採って装置を作製し、装着時の違和感が最小限になるよう調整を行います。同時に、「日中の噛みしめに気づくコツ」や、「寝る前の過ごし方」など、行動療法のポイントもお伝えし、少しずつ取り入れていただきます。
その後は、定期的に装置の状態や歯・顎の変化をチェックしながら、「今のやり方で負担が減ってきているか」「必要に応じてアプローチを変えるべきか」を一緒に確認していく流れになります。
7. 当院で歯ぎしり・食いしばりに向き合うときの考え方
みどりの森デンタルクリニック町田では、歯ぎしりや食いしばりの治療を行う際、「完全にゼロにすること」よりも、「歯や顎が壊れないように守りながら、少しでもラクな状態に近づけていくこと」を大切にしています。
歯ぎしり・食いしばりは、その方の生まれ持った噛み合わせの特徴や、骨格、筋肉の使い方、性格やストレスの受け止め方など、多くの要素が絡み合って生じます。そのため、「これをやれば完治します」というシンプルな答えをお出しすることは難しい分野です。
だからこそ、今の状態をしっかりと共有し、「何を優先して守るのか」「どこまで治療に踏み込むのか」「どのくらいのペースで進めていくのか」といった点を、一つひとつ相談しながら決めていくことが重要だと考えています。
「こんな軽い症状で相談していいのか分からず、ずっと我慢していました」とおっしゃる方も少なくありません。気になっていることがあれば、まずは一度お話を聞かせてください。歯ぎしり対策の“正解”は一つではありませんが、その方にとって現実的で前向きな選択肢を、一緒に探していければと思っています。
8. まとめ:守る治療と、変えていく治療を上手に使い分ける
歯ぎしりや食いしばりは、多くの人が少なからず経験している現象ですが、強さや頻度が高い状態が続くと、歯・顎・筋肉・頭痛・肩こりなど、さまざまな不調の引き金になります。
ナイトガードは、歯や顎を守るための心強い味方です。一方で、それだけで歯ぎしりそのものがなくなるわけではなく、日中の噛みしめに気づくこと、寝る前の時間を整えること、姿勢やデスク環境を見直すことなど、行動療法的な取り組みと組み合わせることで、より効果的な対策になっていきます。
東京・町田エリアで、歯ぎしりや食いしばりにお悩みの方は、「この程度で相談していいのかな」と迷われるかもしれませんが、その違和感に気づけていること自体が、すでに大切な第一歩です。気になることがあれば、どうぞ一度ご相談ください。
少しでも参考になれば幸いです。
自身の歯についてお悩みの方はお気軽にご相談ください。
本日も最後までお読みいただきありがとうございます。
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